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2010年7月13日 (火)

「ルビーの指環」 寺尾聰

言わずと知れた「スーパーヒットソング」である。
数々の栄光に彩られた曲と言えようが、私が一番印象深いのはTBS系列の歴史的歌番組「ザ・ベストテン」での「12週連続1位」という「最長不倒記録」で、これはついに破られることがなかった記録になった。

「ルビーの指環」
ルビーの指環 寺尾聰 歌詞情報 - goo 音楽

(「指輪、ではなく指環。こういうところが松本隆なのだ)
は、作詞が松本隆、作曲が寺尾聰という組み合わせの曲。
当時の石原プロ社長「石原裕次郎」に「お経のようだな」と笑われたという逸話も残っている。
確かにそのゆっくりとして、淡々と進むメロディーラインは読経のようでもあり「さもあらん」と納得できそうな気もする。
ちなみに当の石原裕次郎も、実兄である「石原慎太郎都知事」に「歌うな!」と注意されたということがあるそうだから、ともすれば裕次郎と言う人は「天才的歌唱プロデューサー」としての資質があったのかも知れない。

男女の恋の別れの一部分を綴った歌詞は、ある意味で天才的ワードライターの仕事としては「平凡」な感じがする内容になっている。
松本作品は、様々な要素を縦横から組み入れて造られていく「オブジェ」のようなところがあるので、こういった「印象派の絵」のような作品は、珍しい分類に入るだろう。

それでも冒頭の「くもり硝子のむこうは風の街」というところなどは、いかにもという感じはする。
「くもり」(これは天候の意と解することも出来る)「硝子」
「むこう」「風の街」
…というふうに「事象」と「名詞」をくっつけてペアにして一行を作ったりする。
これは後の「冷めた紅茶が残ったテーブルで」にも使われている。


この時代の歌謡界をみると、アイドルあり、演歌あり、ベテランあり、新人ありで群雄割拠だ。
大変に華々しい時代を、日本音楽会は迎えていたと言って過言ではなかろう。
そんな中で倒れることもせず、ひたすら売れ続けてきた理由はなんだったのだろうか?。

当時17歳の高校生であった私にとって、歌謡界も、ザ・ベストテンなどの歌番組もまさしく「ど真ん中」であり、その「明るい華やかさ」は、青春そのものといった感じだった。
…そんな「華やかさ」の中に「いきなり現れた」異色の存在が「寺尾聰」であり「ルビーの指環」だったのだ。

淡々と刻まれる「大人のメロディー」、グラサンに革ジャケットという格好は、おおよそ「きらびやかさ」とは無縁だった。
ドライで「都市(まち)の匂いしかしない」その雰囲気は「お子ちゃま」向きのアイドルなどには到底出せない魅力があった。

ザ・ベストテンでの「12週連続1位」というものを、ただただ驚嘆しながら見ていたものだ。
12週というと約3ヶ月だから、季節がひとつ移り変わろうともトップだったということになる。
これは例えば、同じように大セールスを記録してきた歌手である「松田聖子」と比較しても異質なのがわかるだろう。

彼女は基本的に「季節に合わせる格好」で、シングル曲をリリースしてきた。
例えば81年ならば
・1月 チェリーブラッサム
・4月 夏の扉
・7月 白いパラソル
・10月 風立ちぬ
といった具合だ。
当然、リリースからいきなり1位になるわけではないので、それにはタキシングの時間が必要になってくる。
「チェリーブラッサム」ならば、ピークは3月下旬から4月中旬までで、それまでに巡航高度まで上昇が可能ならばいいのである。
その後は緩やかに下降していき、次のシングルを発表するわけなので「それまでの命」であればいいだけだ。

つまるところ「シングルのピーク」というのは、1ヶ月すら必要はないのである。
それでも十分すぎるくらいに元は取れてしまう。
3ヶ月以上の「長期間君臨」というのが、いかに「異常事態」か?というのは伝わるだろうか?。

ヒット曲というのは「マネージメント」が最重要時であることは言うまでもない。
アイドル歌手などは、そうやって「影の力」で、ヒット曲を連発させているわけである。
綿密なマーケティングによって売りだされる「商品」というのが、アイドルの偽らざる素顔と言えるだろう。

しかし寺尾聰はアイドルではないし、綿密なマーケティングの結果、長期間トップに君臨してきたのでもない。
松本隆の作詞が、特別彼の他の曲よりも優れていたとも言いがたい。
寺尾の作曲は素晴らしいけど、そればかりでもないだろう。
これは「望むべきものを、確実に提供した結果」としか言えないだろう。
綿密なマーケティングを、魅力的なアイドルの姿を、彼と彼の歌は「超えた」のだ。
それはまさしく「奇跡」と言っても過言ではないだろう。


バブルの崩壊など、微塵も見えなかった時代である。
経済的にも、精神的にも豊かだった時代だからこそ「格好をつける男」が輝いていた時代でもあったのか。
私ならば…そして現在ならば「ルビーの指輪を捨てる」など考えもつかない。
彼女から返してもらって、質屋で換金するのが「現在の恋の終わりの風景」なのかも知れないなぁ…。

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